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クループ症候群


 

 

 クループ症候群は、喉頭(声を出す部位周辺)が炎症のため腫れて、次のような症状がでる病気です。

【クループ症候群の様々な症状】

 かぜ症状から始まり、突然の吸気性呼吸困難(息を吸うことができない 、吸気時にゼイゼイ、喘息の時は呼気時にゼイゼイしますのでそこで見分けますを起こし、泣いてもいつものように泣き声が出ず、鋭く「 ヒーヒー」という息が漏れるような音がします。クループ症候群は、ほかにこんな症状が見られます。

  •  声ががれる(嗄声)。

  •  よく見ると、鎖骨の上の凹んだ所(鎖骨上窩)や両方の鎖骨が交わる胸の真ん中の上の凹み(胸骨上窩)が、ペコンペコンと息を吸う時に凹む。 呼吸困難。

  •  顔付きがとても苦しそう。チアノーゼ。

  •  しばしば犬の吠える声に似た乾いた咳(犬吠様咳嗽) を伴なう。 ケンケンいう感じ、もしくはオットセイの鳴くような感じの咳。

 クループ症候群とは、上記のような犬吠様咳嗽、嗄声、吸気性喘鳴、呼吸困難などの症状を示す一群の疾患をいいます。

 

【原因の大部分はウィルス感染】

 発症には、以下のような原因が考えられます。

① ウイルス感染が大部分でパラインフルエンザウイルス1型・2型による喉頭気管気管支炎。

② 高熱と重篤な呼吸困難を伴い、急激な経過をとるインフルエンザ桿菌などによる喉頭蓋炎。

③ アレルギーにより喉頭の入口にむくみがおきたもの(声門浮腫)。

④ 異物(ピーナッツなど)や腫瘍などによる機械的な閉塞。

 

【6か月〜6歳ごろの乳幼児に多い】

 大多数が①で、3か月から3歳までのお子さん、とくに1〜2歳ごろのお子さんに多くみられます。 ほかの原因ウイルスにインフルエンザウイルス、アデノウイルス、RSウイルスなども知られています。

 

ウイルス性クループ(喉頭気管気管支炎)、痙性クループ、急性喉頭蓋炎、細菌性気管炎、ジフテリアなどの種類があります。ウイルス性クループや痙性クループは比較的軽症のことが多いですが、喉頭蓋炎、細菌性気管炎、ジフテリアは急速に症状が悪化することがあります(死亡することもあります)。クループ症候群は現在ほとんどがウイルス性クループか痙性クループですが、急性喉頭蓋炎や細菌性気管炎などの可能性も完全には否定できないことが多いのです。急激に症状が悪化することがありますので、呼吸困難が強かったり、咳嗽がボスミン吸入でも改善しないような場合には、入院した方が安全だと思われます。入院せずに様子をみる場合にも、夜間に症状が悪化する可能性も強いので、呼吸困難が強まったり、せきが止まらなかったりした場合には救急外来を受診してください。以下に各疾患の特徴を簡単ですが記しておきますから参考にして下さい。

【ウイルス性クループ(喉頭気管気管支炎)】
 数日前から微熱や軽微なかぜ症状があり、引き続き、嗄声、犬吠様咳嗽、吸気性喘鳴が出現します。3〜4日がピークで症状は夜間に悪化する傾向があります。ボスミンという薬を吸入すると症状が改善することが多いので、病院でこの吸入を行います。貸し出し用の吸入器があるときは薬剤を処方して自宅でも吸入してもらうこともあります。30分ほどで効果が現れることが多く、効果が現れない場合には他の疾患(急性喉頭蓋炎、細菌性気管炎など)の可能性を考えることが必要です。ただし、その効果は一時的なことも多く、2〜3時間後に再び症状が悪化することもありますから注意が必要です。またステロイド薬の内服や静注も有効であるといわれています。ウイルス性クループでも挿管が必要になることもあります。呼吸困難が強い場合、咳嗽が止まらない場合には、入院して治療します。

【痙性クループ】
6か月から3歳に好発します。何らかのアレルギー素因を基礎に、ウイルス感染を契機に発症することが多いようです。感染との関わりがなく発症することもあります。夜間に急に、喘鳴、犬吠様咳嗽などの症状が出現しますが、通常は数時間以内に軽快します。ボスミンの吸入やステロイドの静注が有効です。加湿や戸外の冷気などだけで症状が改善することもあります。何回も同様の発作を繰り返すことが特徴です。再発を繰り返しながら、5〜6歳頃までに軽快することが多いようです。

【急性喉頭蓋炎】
2歳から6歳に好発し、先行する感冒様症状がなく急激に発症し、急に呼吸困難が増強し窒息死する危険性があります。初期には高熱、のどの痛み、咳が出現し、12時間以内に吸気性喘鳴、ものをのみこめなくなり、よだれが多量にでます。やがて極めて重症な呼吸困難となります。症状の急速な増悪により死に至ることもあります。大泣きや興奮から呼吸停止を来すことがあります。患児の不安を軽減する努力が必要です。ボスミンの吸入やステロイドの静注は効果がありません。抗生物質を投与します。呼吸状態に注意しながら、慎重に経過を見ていきます。必要ならば酸素投与や挿管を行います。

【細菌性気管炎】
1か月から6歳に好発し、高熱、吸気性喘鳴、犬吠様咳嗽がみられ、初期にはウイルス性クループと似ています。ものをのみこむと痛がることが多いようです。症状が急速に増悪することがあり、死に至る可能性もあります。入院治療が必要です。ボスミンの吸入やステロイドの静注は効果がありません。抗生物質を投与します。呼吸状態に注意しながら、慎重に経過を見ていきます。必要ならば酸素投与や挿管を行います。

【ジフテリア】
現在の日本では1年間の発症は10例以下ですが、非常に重篤な疾患ですから、3種混合の予防接種が終了していない人は注意が必要です。嗄声、犬吠様咳嗽、吸気性喘鳴などの症状からはじまり、やがて極めて強い呼吸困難が生じます。

【治療の基本方針】
症状や経過、血液検査、ボスミン吸入に対する反応性などを参考にこれらの疾患を区別します。呼吸困難が強そうなときやせきが止まらないときには、入院して治療を行うことが必要になります。ただし、その時には入院は1泊2日か2泊3日程度ですむことが多いです。入院後はボスミン吸入、ステロイド静注(1回のみのことが多い)、細菌感染の可能性を考慮し、抗生物質の静注を行います。

【家庭での注意】
軽症例では加湿だけで症状が改善することがあります。充分な加湿をしてください。大泣きをきっかけに症状が悪化することもありますので、患児の安静を保つように心がけて下さい。咳の量や強さ、喘鳴の大きさ、陥没呼吸など呼吸困難の程度、機嫌、元気さ、顔色などに注意しながら症状が悪化するようなら、ためらわずに救急外来を受診してください。

通常4〜7日間で軽快します。


発症したら、喉頭部分を安静に保つこと

 クループ症候群は、喉頭(コウトウ)という声帯のある気管の入口部分周辺に炎症が生じ、喉頭周辺が腫れるためにおこります。喉頭は咳刺激に対して敏感なところなので、冷たい乾いた空気、酸や香水などの刺激や臭いのある空気を吸い込むなど、ちょっとした刺激で咳込んでしまいます。こんな症状が出たら、夜中でも直ちに病院に行きましょう。喉頭の部分の安静がとても大事なので、なるべく泣かせないように、咳の刺激にならないように冷たい空気や、臭いの強い空気を避けましょう。

 入院治療では、酸素投与や加湿が必要になることが多いです。冬は空気が乾燥しないように、常に濡れたバスタオルなどを部屋に掛けておくのも良いでしょう。




 クループとは偽膜を作ることを意味するので、以前は喉頭に偽膜を作る喉頭ジフテリアを真性クループ、偽膜は作らないが同症状をとるものを仮性クループといっていましたが、最近では予防接種の普及によって喉頭ジフテリアはまれとなり、現在ではこのような分け方はしていません。


鎮咳薬の投与は適切に

 咳がでたら、コンコン、ケンケン、ゴホンゴホン、ゼイゼイ、ヒューヒューなどと具体的に、どんなとき、いつから(日中、夜間、明け方)かを医師に告げるようにしましょう。小児、ことに乳幼児では咳に伴って嘔吐をきたすこともしばしばで、このため眠れなかったり、食欲が落ちたりします。ただ咳は気道内の分泌物とか異物を排除するための生体の防御反応なので、やみくもに鎮咳薬を投与すべきではありません。

 

 


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