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おたふくかぜ

(流行性耳下腺炎)


 

原因

 医学的な病名では流行性耳下腺炎といい、おたふくかぜウイルス(ムンプスウイルス)の感染でおこります。 似たような症状で、反復性耳下腺炎化膿性耳下腺炎があります。

 咳などでの飛沫感染や、唾液などでの接触感染でうつります。感染力が強く、家族や保育所、幼稚園、小学校など子供同士が密接に接触するところで流行します。同居家族で97.5%、学校・幼稚園などの集団クラスでは90%近くが感染すると報告されています。しかし、おたふくかぜは、うつっても症状のまったく出ない不顕性感染が多いという特徴があります。うつった人の約30%はこの不顕性感染で症状が出ないので、うつっているかどうか診察ではわかりません。血液中のムンプスウイルス抗体価を測定するとおたふくかぜがうつっているかどうかが判ります。(詳しくは ご相談ください)

 また、母親からの抗体(胎盤を通過する移行抗体)は、生後10ヶ月ごろまで有効といわれています。
 潜伏期はおおよそ2〜3週間で、好発年齢は5〜10才です。年間を通じて流行しますが、冬から春に多いようです。

 

症状 と 合併症

 両側あるいは片側の耳下腺 (耳たぶ〜耳の前のあごのラインに沿った部分)が腫れてき ます。ふつうは、片側から腫れ、1〜2日のうちに両側が腫れることが多いようです。ただ4人に1人くらいは、片側だけの腫れで済みます。また、50%のひとに顎下腺の腫れ もみられます。 腫れはじめから3〜4日間は痛みが強いことが多く、特に唾液の分泌が促されるときに増強します。たとえば、クチャクチャ噛むようなときや酸っぱいものを食べるとき 、夕食よりも唾液が出始める朝食のときなどです。普通は7〜10日前後で腫れがひき 、長くても2週間で消失します。熱はでる場合とでない場合があります。

 

 合併症として多いのは無菌性髄膜炎で耳下腺が腫れてから3〜10日後に発症、高熱と頭痛と嘔吐が疑うサインです。また 、有名なものに思春期〜成人発症男性の2 0〜30%に精巣(睾丸)炎、女性の約7%に卵巣炎の合併があります。しかし、これが重大な不妊の原因とはな ることは少ないようです。そのほかには、すい臓炎、腎炎、心筋炎の報告もあります。そして、まれに感音性難聴を合併します (最近の調査では1/2,000例という報告がある)。多くは一側ですが、 これは永続的な後遺症となり予後は不良です。

 

(1)無菌性髄膜炎

 他の無菌性髄膜炎と同じ症状で、発熱、頭痛、嘔吐、けいれんなどが症状です。頻度は、おたふくかぜの2-10%と言われています。ただし髄膜炎の症状のない場合でも、髄液の検査で、異常を示すものがけっこうあります。発症時期は、耳下腺が腫れ出してから4日以内が50〜60%となっていますが、耳下腺が腫れ出す前(20%)や耳下腺が腫れない場合(4〜5%)もあります。予後は良好で、大部分は2週間程度で後遺症なく治ります。


(2)脳炎・脊髄炎
 頻度的には0.2%程度と言われています。2〜3日で急激に発症し、髄膜炎の症状の他に、麻痺や意識障害なども加わります。


(3)精巣(睾丸)炎・卵巣炎
 思春期以前はまれ。ほとんどは思春期以降に合併します。精巣(睾丸)炎は、成人男性の10〜30%の頻度で起こり、耳下腺腫脹後4-10日くらいに多いとされます。主な症状は、発熱、頭痛、悪心、精巣(睾丸)の激痛・腫れ、陰嚢の発赤などで、3-7日くらい続きます。まれに睾丸の萎縮を起こすこともありますが、片側だけのことが大部分なので不妊症となることはまれです。卵巣炎の症状は下腹部痛が多いようです。


(4)膵臓炎
 合併率は数%といわれています。7-10日目頃に多く発熱、上腹部痛、悪心、嘔吐、下痢などの膵炎の症状があります。だいたいは1週間程度で治ります。以前は糖尿病との関連が言われていましたが最近ではあまり関係がないと言う意見が多いようです。


(5)聴力障害(難聴)
 合併率は 0.4%以下といわれ、難治性で、回復しません。3〜7日目頃に多く、突然めまい、耳鳴り、嘔吐、ふらつきなどとともに耳が聞こえにくくなります。多くは、片側の耳だけのため、日常生活には差し支えないことが多い。 


(6)心筋炎

 おもに成人の合併症で、頻度としてはまれです。胸痛、頻脈、呼吸困難などの症状が、1〜2週後から出現し、突然死することもあります。

 

治療

  特別な治療法はありません。症状や合併症に応じて、治療します。耳下腺の腫れや痛みに対して、湿布などを貼ってもかまいませんがそれ程効果はないようです。痛みが強い時は、唾液が出やすくなる酸っぱい物や果汁は避けた方がよいでしょう。

 対症療法(解熱鎮痛剤内服、局所の冷湿布)で経過を見ます。

 髄膜炎を疑う症状(高熱、頭痛、嘔吐など)が出現すれば必要により髄液液査が行われます。輸液療法で数日間の入院を要することがあります。     

 

予防

 予防接種:おたふくかぜ弱毒生ワクチン(任意接種のため有料)が有効です。ワクチン接種2〜3週後、まれに耳下腺が腫れたり、発熱することがあります。また、ごくまれに無菌性髄膜炎を合併したという報告があります。

 

学校は

 学校保健法で、腫れがひくまで登校停止することが決まっています。保育園・幼稚園もこれに準じます。

 

 


反復性耳下腺炎


 

反復性耳下腺炎とは

 耳の下の唾液腺の耳下腺が腫れて痛がりますが 、おたふくかぜとは異なります。普通、 片方の耳下腺だけが腫れ、他の唾液腺ははれることはありません。数週間から数年おきに繰り返し腫れ、回数は一定してません。発熱はなく、腫れは2〜3日でひいてきます。痛みはそれほど強くありません。 耳下腺が腫れる病気としてはおたふくかぜがもっとも多いのですが、2番目にこれが多く、はじめの頃の片方のみの耳下腺がはれた場合にはおたふくかぜと区別ができないことが往々にしてあります。 この場合、先に述べたことを考えあわせて診断します。
 

原因
  何らかの原因で唾液の流れる管が広がってるとか、アレルギー、感染が関与していると推定されています。 まれにシェーグレン症候群(自己免疫疾患)などと関係していることもあります。
 

治療
  痛みなどを抑える薬を使うことがありますが、特別な治療はありません。発熱や腫れに熱感がある場合には、細菌感染合併を考えて抗生剤を投与することがあります。
 数年間にわたり何回もくり返しますが、ほとんどが 学童期で自然に治癒します。
 

家庭での注意
  食品は酸っぱいものや、固いもの、塩辛いものは避けます。
  入浴はかまいません。

 

 


化膿性耳下腺炎


 

原因
  口の中の細菌が、唾液腺導管(唾液が出るところ)から耳下腺に入り込んでおこる急性の化膿症です。黄色ブドウ球菌、溶連菌、肺炎球菌が原因として多い細菌です。最初はおたふくかぜと 区別がつかないことがあります。
 

症状
  普通は片方の耳下腺が腫れます。痛み、圧痛、発熱、頭痛などを訴えます。耳下腺部の皮膚は赤くなり、熱感があり、押さえると痛がります。はれた耳下腺部を押さえると、口の中の開口部から膿がでてくることがあります。 腫れがひどくなると、耳下腺部に波動感がでてきて膿が全体にたまってきたことがわかります。
 

治療
  抗生物質の投与が必要です。軽い場合は抗生物質の内服、痛みを和らげる薬、湿布などを行います。そのままよくなることもありますが、症状が激しい場合は入院治療が必要なこともあります。膿がたまり、波動感が出てくれば、切開排膿を行います。

 

 


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